冴えない医学生が素敵な医師になるまでの軌跡

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癌の代替療法にはご注意を!

皆さんは、癌の代替療法についてどれほど知っていますか?
癌の代替療法とは、標準治療(手術療法、放射線療法、化学療法)の代わりに行われるものを指します。
代替療法には、漢方薬、気功、鍼灸、指圧、マッサージ、カイロプラクティック、民間療法、健康食品、サプリメントなどが含まれます。
芸能人でも、小林麻央さん、川島なお美さん、スティーブ・ジョブズ氏などが民間療法を受けていたことは有名ですよね。
今回は、民間療法を含む代替療法の問題点について解説していきます。

代替療法で癌が治ると証明されたものは一つもない

代替療法の中には、テレビ、本、雑誌、ネットの広告などで、素晴らしい効果があるように謳われているものがあります。
「ニンジンジュースで癌が消える!」といったようなものです。
しかし、代替療法の中で、癌を治したり、癌の進行を遅らせたりすることができると科学的に認められた治療法は現在一つもありません
残念ながら、これが現実です。
「○○をすることで癌が治った!」といった個人の体験談が、自分にも当てはまると考えるのは大間違いです。
対して標準治療は、多くの患者を対象とした臨床試験を行い、癌に対しての有効性が科学的に証明されたものばかりです。
ただし、代替療法の中でも、痛みを和らげたり、患者さん本人の不安を取り除いたりできるという点で効果があるものも中にはあります。
しかし、それらによって余命が改善したりすることはありません。
すべての代替療法は癌の根本的治療にはなりえないことをまず頭に入れておいてください。

代替療法のさらなる問題点

代替療法の問題点は、ただ「癌に対して効果がない」だけにとどまりません。
標準治療の妨げになったり、代替療法を行うことでかえって体調を悪化させてしまうものもあります。
代替療法を行うことで、標準治療を受ける時期が遅くなったり、標準治療を受ける機会を失ったりする事態は、避けなければなりません。
代替療法を行う前に標準治療(手術療法、放射線療法、化学療法)をしっかり受けましょう。

代替療法の多くは高額である

代替療法のほとんどは保険適用外です。
さらに、代替療法を行う業者には、藁にもすがる思いで相談しに来た患者さんの弱みに付け込み、高額な治療費を請求してお金儲けをしようと考えるところも多いです。
また、お金を払えば標準治療より良い特別な治療が受けられるだろうと考える高所得者層とそれに応える悪徳業者がいることも関係しているでしょう。
そして効果が上がらなければ、「治療が足りないから」といってさらなるお金を要求する、負のスパイラルに陥ってしまいます。
こうなってくると怪しい新興宗教とやっていることは変わりません。
代替医療にお金を使いこみ、肝心の標準治療が受けられなくなれば、元も子もないです。

代替療法に頼りたくなる心理

代替療法にはこれほどまでに問題点があるのに、巷には未だに多くの代替療法があふれ、それを支持する人が多いのはなぜでしょうか。
代替療法に頼りたくなる患者さんには、現在の治療法に対する不満、癌の進行に対する不安、痛みなどの症状に対する悩みが背景にあるのではないでしょうか。
そんな時は、代替療法を試みる前に主治医に相談してみて下さい。
主治医はきっと患者さんの悩みを解決する方法を示してくれるはずです。
なぜなら、医師はそういった悩みをもつ患者さんを過去に沢山見てきているからです。
主治医に直接言いにくい場合は、病院にある「医療相談室」等に相談するのも良いです。

信頼できる情報にあたろう

ここまで読んで、代替療法の問題点は理解していただけたと思います。
では、もし自分が癌になって、自分が受けるべき治療について調べたいと思った時に、どの情報を信じればよいのか不安に思う人も多いことでしょう。
信頼できる情報源を2つ紹介します。
国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」
・各学会が出している「診療ガイドライン
 各学会が科学的根拠に基づいた診断や治療の仕方をまとめたもので、癌に限らず様々な疾患のガイドラインが存在します。
 「○○癌 ガイドライン」で検索すれば出てくると思います。
 多くの学会がインターネット上で無料で公開しています。
 中には患者さん向けに編集されたガイドラインもあります。
もちろん、現場で働いている医師は自分の専門分野のガイドラインについては把握しているので、基本的には医師に任せておけば大丈夫ですが、患者さん自身がガイドラインを勉強することで、自分が受ける治療についての理解が深まり、安心につながるのではないでしょうか。

まとめ

癌の代替療法の問題点についてお話ししました。
現在の西洋医学に限界があるのは確かです。
しかし、そこですぐ代替療法に飛びつくのはナンセンスです。
代替療法にだって、限界はあります。
「〇〇で癌が治った!」というような甘い言葉に騙されないようにしてください。
科学に誠実な医師だって、「絶対治る」とは言わないのですから。